こんにちは。
91歳認知症の男性が列車にはねられ、JR東海が介護をしていた妻と長男に対して720万円の損害賠償を求めた訴訟で、2日、弁論が開かれました。
妻がうたた寝をしていた隙に、男性は出ていってしまったようです。
一審、二審ともに監督義務者としての責任が問われました。
2つの視点から、考察する必要があります。
介護の現場を知るものとして、認知症患者の介護を一瞬の隙もなく行うのは不可能と思えます。昼夜を問わず始まる行動に対応しているからこそ、疲労がたまり、睡魔に襲われます。
歩行機能に問題がなければ、たった今リビングにいたとしても20秒もあれば外へ出て行ってしまうでしょう。小さな住居でしたらもっと短いかもしれません。
監督を怠ったと責任を問うことは、介護者に24時間、いえ1日86,400秒常に監視し続けることを求める、と受け取って良いでしょう。
そして、最高裁の判決というのは、「判例」として今後何十年も同様の訴訟の判決を拘束します。
類似の事故が起きたときに、すべての判決が「賠償責任は介護者にある」という結論になります。
一方、被害者側で考えてみます。
今回の事故はJR東海で起きました。振替輸送その他の現実の損害額はもしかすると、賠償請求額より多かったかも知れません。たまたま大資本であったので、おそらくこの事故で経営が傾くことはないでしょう。
どこかのホテルでアルバイトが厨房の流し台で入浴・洗体していたことがありましたが、認知症患者の場合、入浴ではなく、排泄ということもあり得るわけです。
(あえて極端な例えをしています。ご理解を。)
もし、こうした被害者が中小企業だったら? 家族経営だったら? 個人屋号だったら?
お店が廃業に追い込まれたときに、
「認知症患者の不法行為は本人、介護者ともに免責される」
という判例に納得するでしょうか?
こうしたことを考えれば、賠償責任を明確にする必要があるでしょう。
まだ医療・福祉・介護職以外で認知症介護にかかわっている人は圧倒的に少ないでしょうから、後者の判断に傾くでしょう。また、法学的にもそれが正しいと思います。
今回の最高裁判断は、相反する正義に、軍配を上げるようなたいへん難しい判断になると思われます。
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【2016.2.3掲載記事】